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デザイン保護は 人と文化のバロメータ

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Q&A

意匠の類否判断は、物品の類似と形態の類似について行われますが、意匠に係る物品の類否は具体的にどのように判断されるのでしょうか。
 ご質問のとおり、意匠の類否判断について、近年の判決には「一般需要者である取引者・需要者が、まず、物品を全体的に観察するのが通常であることを前提に、@公知意匠に係る物品と当該意匠に係る物品が同一又は類似であるか否か、Aそれぞれの形態が同一又は類似であるか否かを検討し、その際、意匠の形態の類否については、全体観察を中心に、これに部分的観察を加えて、総合的な観察に基づき、両意匠が看者に対して異なる美感を与えるか否かによって類否を決するのが相当である」と述べられています*1
 また、特許庁の意匠審査基準には「意匠の類否判断の手法」について*2、対比する両意匠の物品の認定及び類否判断は、「意匠に係る物品の使用の目的、使用の状態等に基づき、両意匠の意匠に係る物品の用途及び機能を認定する。意匠とは物品の形態であることから、意匠の類似は、対比する意匠同士の意匠に係る物品の用途及び機能が同一又は類似であることを前提とするが、この場合にいう『意匠に係る物品の用途及び機能が同一又は類似であること』とは、物品の詳細な用途及び機能を比較した上でその類否を決するまでの必要はなく、具体的な物品に表された形態の価値を評価する範囲において、用途(使用目的、使用状態等)及び機能に共通性がある物品であれば、物品の用途及び機能に類似性があると判断するに十分である」と記載されています。
 しかしながら、意匠に係る物品の用途及び機能は、その捉え方によっては幅広いものとなり狭いものともなりますので、単に用途及び機能の類似と一口に言っても物品の共通性を見定める尺度とはなり難い面があります。
例えば、従来、無線通信機と電話機、フィルム式カメラとビデオカメラ、電子複写機と印刷機とは、用途及び機能が異なり、意匠に係る物品が類似しない(非類似物品)と判断されていましたが、近年、携帯電話機、デジタルカメラ、情報処理機能を有する電子複写機(複合機)が普及したことにより、いずれも、相互に類似する物品(類似物品)と判断されています。
 前記意匠審査基準には、「具体的な物品に表された『形態の価値を評価する範囲』において、用途及び機能に共通性がある物品であれば、物品の用途及び機能に類似性があると判断するに十分である」と記載されていますが、「形態の価値を評価する範囲」という記述は抽象的な表現であり、具体的な説明が必要と思料します。
 推察すると、近年、デザイン開発された意匠は、その物品の機能が多岐にわたって複合化しており、用途及び機能の尺度によって、物品の類否を決するのが困難な状況となっていますので、デザイン開発された意匠の形態が相互に類似してくれば類似物品と判断される傾向にあり、それを追認した判断と思料します。
 先ごろ、多機能物品(複合物品)に関する類否判断がなされた判決がありましたので、ご紹介します*3
本件意匠権侵害差止請求権不在確認事件において、意匠権の意匠に係る物品「増幅器付スピーカー」と原告の意匠に係る物品「増幅器」が類似する物品か否かが争点となりました。知財高裁は、両物品の類似性について、「本件物品は、増幅器及びスピーカーという、2つの機能を有する、いわゆる多機能物品であるところ、増幅器の機能において、原告製品と機能を共通にするものであり、両物品は類似すると解される。・・・本件物品の場合、増幅器もスピーカーも、それぞれ音源からの音を再生するために独立して不可欠の機能を有するものであって、前者が後者の一部品となるものではないと判示しました。すなわち、願書に具体的に記載された物品の名称に捉われず、願書添付図面および願書の意匠に係る物品の説明等の記載を総合して、物品の類似を判断する趣旨であり、デザイン開発の重心が多機能物品に移っていることを考慮した判決理由と思料します。
 結局、物品の類似の判断は、その物品の用途および機能の共通性を基本として、その物品に係る意匠が創作される分野のデザイン開発の実態を考慮してなされていると思料します。
 ところで、「物品が多機能物品である場合」の意匠登録出願に記載する物品の名称について、特許庁は、その物品が有する複数の機能(個別の物品になり得る程度の機能)を全て表した表現とすることが適当です。「○○付き××」のように表すことになります。○○と××の表し方(順序)については、どちらの形状または機能が主であるかにより、主となる方を後にして表します。三以上の機能を有する物品の場合にも同様に主となる方を最後にして、△△、○○付き××のように表すことを奨励しています*4。本件意匠権の場合、「増幅器兼スピーカー」という名称が不適当とされることから、「増幅器付スピーカー」としたものですが、「どちらの形状または機能が主であるかにより、主となる方を後にして表します」という記載に照らせば、意匠権者はスピーカーを主とした意匠として、意匠登録を受けたことになります。しかしながら、本件意匠を見ますと、形状的にはスピーカーの占める面積が大きく、物品の機能としては増幅器と判断され、物品の名称の選択には困難が伴う事例と思料します。
 前記判決は、この点について、特許庁発行のガイドラインによれば、多機能物品に係る意匠登録出願については、『○○付き××』という物品名として当該出願をすることが求められており、そのような多機能物品が有する複数の機能の一つに着目して、対象となる製品との間で物品の類否を検討することは、一意匠一出願の原則と抵触するものではない。」と判示していますので、本件意匠権が「○○付き××」であり、侵害品が「○○」であったとしても、物品が類似することがあり得ることを判示しています。
 以上のことを鑑みますと、多機能物品に係る意匠登録出願に場合、複数の機能を有する物品の場合、「△△、○○付き××」のように羅列して表しておくことをお勧めいたします。
*1 平成18年(行ケ)第10004号「スポーツシャツ」審決取消請求事件判決言渡平成18年7月18日
*2 意匠審査基準22.1.3.1.2「意匠の類否判断の手法」
*3 平成18年(ワ)第19650号 意匠権侵害差止請求権 不存在確認請求事件判決言渡平成19年4月18日
*4 意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き(平成23年改定意匠審査基準対応版)

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