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Q&A

意 匠 の 類 否 判 断 に おい て、 先 行 公 知 意 匠の 存 在 が 類 否 の 決 め手 に な る と の こ と で す が、 登 録要 件 判 断 に お け る 出 願 意 匠 と 引用 意 匠、 意 匠 権 侵 害 事 件 に お ける 本 件 登 録 意 匠 と 被 告 意 匠( イ 号意匠)に関する両意匠の共通点と差 異 点 の 評 価 時 点 に つ い て 教 えていただけますか。
1.登録要件の類否判断の場合

 意匠登録出願がなされたら、その数カ月後に実体審査が行われますが、出願意匠(以下「本願意匠」という。)に類似する公知意匠が発見されたときには、審査官から、拒絶の理由につて、例えば「本願意匠と引用意匠とは、時計文字盤の数字及びバンド取付け部等の具体的態様に差異がありますが、両意匠は、意匠全体の基本的構成態様の共通点が顕著であり、前記の差異点は、意匠全体から見れば部分的な差異に止まっており、共通点を凌駕するものではありません。」等の理由が付され、「意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることができない意匠)に該当します。」との拒絶理由通知書を受けます。
 この拒絶理由通知書に記載の類否判断の構造を模式的に表すと、[図1]のようになります。
 すなわち、両意匠の類否判断において、基本的構成態様の共通点が、具体的態様の差異点(a)ないし(d)を凌駕するか、具体的態様の差異点が、基本的構成態様の共通点を凌駕するかにより、両意匠の類否が決します。
 したがって、拒絶理由通知書に対する意見書においては、両意匠に共通する基本的構成態様は、ありふれた態様であり意匠的特徴が無く、類否判断に影響を及ぼすものではないことを、公知意匠を提出することによって立証することが有効です。その一方で、本願意 匠と引用意匠の差異点を具体的に明示し、本願意匠が、新たな創作的工夫により格別の美感を表出していることを主張します。
 このことは、意匠法24条2項に類否判断の主体が、「需要者」と明示された後に(平成18年意匠法等の一部改正)、意匠の類否が争点となった判決において「意匠の形態の類否については、全体観察を中心に、これに部分的観察を加えて、総合的な観察に基づき、両意匠が看者に対して異なる美感を与えるか否かによって類否を決するのが相当である。この場合において、公知意匠との対比において部分的な差異があっても、新たな創作的工夫により格別の美感を与える要素を付加するものと言えなければ、全体より生ずる美感ないし意匠的効果の面において異なるところがないから、公知意匠の範囲内にあると解すべきである。」(平成18年(行ケ)第10004号「スポーツシャツ」知財高裁平成18年7月18日判決言渡)と判示されていることからも明らかです。
 それでは、前置きが長くなりましたが、ご質問にお答えいたします。すなわち、両意匠の共通点の評価時点と、両意匠の差異点の評価時点についてのご質問ですが、共通点の評価時点は、引用意匠が公表された「出現時点」です。
 したがって、本願意匠と引用意匠の共通点を希釈するには、引用意匠の出現前(公表前)の公知意匠をサーチし、審査官の「基本的構成態様の共通点が顕著」であるとの判断を覆すことが重要になります。
 そして、両意匠の共通点は、両意匠の類否を決するほどのものではなく、両意匠の具体的態様の差異が、類否判断に大き な影響を及ぼすものであることを、意見書において主張します。共通点が希釈され、差異点が評価されれば、差異点が相対 的に重くなり、両意匠は非類似の意匠となります[図2]。
 この意見書に対して、審査官は、出願人が差異点として適示した(a)ないし(d)の具体的態様につ い て、公知意匠を 提示して、両意匠の差異点(a)ないし(d)は、公知意匠に見られ、本願意匠独自の意匠的特徴とはなり得ないことを理 由として、拒絶査定をする場合がありますが、その場合の公知意匠の評価時点は、共通点の評価時点(引用意匠の出現時点)とは異な り、本願意匠の創作がなされ意匠登録を受ける権利が行使された「出願時点」となります。

2.意匠権侵害の類否判断の場合

 意匠権侵害事件において、本件登録意匠と被告意匠(イ号意匠)の類否判断において、判決は「 登録意匠とそれ以外の意 匠との類否の判断は、 需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとされ(意匠法24条2項)、その判断に際 しては、両意匠を全体的観察により対比し、意匠に係る物品の性質、用途、使用態様、さらには登録意匠における公知意匠に ない新規な創作部分の存否等を参酌して、登録意匠について需要者が視覚を通じて注意を引きやすい特徴的部分(要部)を把握し、この特徴的部分を中心に両意匠を対比した上で、両意匠が全体的な美感を共通にするか否かによって類否を決するの が相当であると解される。」(平成23年(ワ)第247号「エーシーアダプター」東京地裁平成24年6月29日判決言渡)と判示しています。
 したがって、本件登録意匠の意匠的特徴(要部)の評価時点は、本件登録意匠の「出現時点」となります。
 出現時点について、本件登録意匠の出願時、登録時、意匠公報発行時のいずれの時点かについて、判決は「意匠の類否の 判断は、当該意匠に係る物品の看者となる取引者、需要者において、視覚を通じて最も注意を惹かれる部分である要部を対 象となる意匠から抽出した上で、登録意匠と被告意匠とを対比して、要部における共通点及び差異点をそれぞれ検討し、全体 として、美感を共通にするか否か を基本として行うべきものである。そして、上記の判断に当たっては、当該意匠の出願時 点における公知又は周知の意匠等を参酌するなどして、これを検討するのが相 当である。」(平成20年(ワ)第1089号「衣料用ハンガー」東京地裁平成20年10月30日判決言渡)と判示しています。
 したがって、本件登録意匠の出現時点は、出願時点(出願日前)となります。
 一方、被告意匠(イ号意匠)の意匠的特徴(要部)の評価時点は、その意匠の出現時点(公表時点)を基準に要部の認定 がなされ、本件登録意匠と被告意匠(イ号意匠)の意匠権侵害の有無の判断(類否判断)がなされることになります。

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