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デザイン保護は 人と文化のバロメータ

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Q&A

意匠法には、意匠登録を受けることができない意匠として「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」(意5条3号)が規定されていますが、「機能的意匠」と「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」とは、どのような違いがありますか。
 確かに、その物品の機能を確保するための技術的要請によって決まる形状は、技術的形状の創作に係るものであり、本来、「技術的思想の創作」の保護を目的とする特許法・実用新案法によって、その保護がなされるべきものです。
 たとえば、機能上の要請から寸法や形状が限定されてしまうものについて排他的独占権が付与されると、その機能を確保するために誰もが採らざるを得ない必然的形状の使用が意匠権侵害となり、産業も発達を阻害する弊害が生じることになります。
 意匠法は、工業上利用できる意匠、いわゆる、工業デザイン・工業意匠(1920 年代に米国において起こった「インダストリアル・デザイン」の訳語)をその保護対象としていますので、意匠の審査実体としては、技術的意匠、機能的意匠は、そのほとんどが保護されています。
 著名なデザイナーであるレイモンド・ローウィの言葉「口紅から機関車まで」になぞれば、「記録媒体から新幹線まで」と言うところでしょうか。
 ところで、工業デザインの開発の歴史は、19 世紀後半に起こったイギリスの産業革命後の機械生産がもたらした装飾の混乱を是正し生活様式にあったデザインの創造を提言した「アーツ・アンド・クラフツ・ムーブメント」に始まり、その後の近代デザイン運動は、1907 年にミュンヘンに設立された「ドイツ工作連盟」、それを引き継いだ1919 年設立の造形芸術学校「ワイマール国立バウハウス」に繋がります。
 このバウハウスの理念は、素材が有する可能性を発見し、素材と人との調和をはかり、人の生活に係る製品を建築空間の中で造形するという思想に基づき、工房から新しい工業製品の意匠を次々に創出していきました。
 ドイツに起こった近代デザイン運動は、大西洋を隔てた米国においては、南北戦争(1861 年〜 1865年)における銃の量産システムが工業化を促進し、機能主義、大量生産を背景とする「インダストリアル・デザイン」活動へと発展していきました。
 この米国における大量生産方式は、機械生産の発達と合理主義の発展を促し、いわゆる機能主義の思想が普及しました。当時の機能主義は、建築家であるルイス・サリヴァンの「形態は機能に従う」や、ル・コルビュジエの「住宅は住むための機械である」という言葉に代表されています。
 したがって、機能的意匠が、意匠法で保護されないということは、まずあり得ません。
 意匠法の平成10 年改正において、「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」が意匠登録を受けることができない意匠として規定されましたが、その具体的事例としては、(1)物品の技術的機能を確保するために必然的に定まる形状(必然的形状)からなる意匠、(2)物品の互換性確保等のために標準化された規格により定まる形状(準必然的形状)からなる意匠です(意匠審査基準41.1.4.1 )。
 必然的形状であるかどうかは、次の点を考慮するものとされています。その機能を確保できる代替的な形状が他に存在するか否か、必然的形状以外の意匠評価上考慮すべき形状を含むか否かです。
 また、物品の互換性の確保等(技術的機能の確保を含む)のために、物品の形状および寸法等の各要素が規格化または標準化されているものであって、規格化または標準化された形状および寸法により正確に再製せざるを得ない形状からなる意匠です。
 標準化された規格の例(同基準41.1.4.1.1 )としては、(1)公的な標準として、財団法人日本規格協会が定めるJIS 規格(日本工業規格)、ISO(国際標準化機構)が定めるISO 規格等の標準規格からなる意匠、(2)事実上の標準(デファクト・スタンダード)として、公的基準とはなっていないが、その規格が当該物品分野において業界標準として認知されており、当該標準規格に基づく製品がその物品の市場を事実上支配しているものであって、規格としての名称、番号等によりその標準となっている形状、寸法等の詳細を特定することができる形状が例示されています。
 話は変わりますが、意匠の審決取消訴訟における争点、本願意匠と引用意匠の類否判断において、時には、意匠の機能的形態の部分は、意匠の類否判断において除外、もしくは低く評価すべきであるとの主張がなされます。例えば、「ゲルダンパー事件」(平成11 年(行ケ)第389 号、平成12 年7月25 日判決言渡)において、「原告は、広く回転ダンパーにおいては、(1)歯車がある点、(2)短円柱状のケース部がある点、(3)ケース部周側面の下端にブラケットがある点、および(4)ブラケットが外方に向かって取り付け平面に対して水平状に突設している点は、いずれも、回転ダンパーの機能的形態であると主張する。しかしながら、原告主張の(1)ないし(4)の形態が、回転ダンパーの当然に備えている機能的形態に属するものであると認めることはできない。」と判示されています。
 したがって、意匠の類否判断における共通点が、両意匠の類否判断に及ぼす影響の評価において、機能的形態の部分であるから、類否判断に影響を及ぼさないという主張は適切ではありません。
 このような場合、技術的形態、機能的形態であるから、類否判断に影響を及ぼさないと主張するのではなく、物品の機能を確保するために不可欠な形状、機能的形状は、その多くが公知形状となっており、普通に知られた形状、一般的な形状ですので、それらの形状は、ありふれた態様であり、看者、需要者の注意を惹かないので、類否判断に及ぼす影響は小さいと主張するのが適切です。

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